澄み渡る空に誘われるように外へ出た、ある休日の午後。 賑わう街を背にして歩いていると、ふとあの赤い屋根の姿が頭をよぎりました。
住宅街を歩いていると突如として現れる、絵本に出てくる山小屋のような洋館。空に突き出した大きな赤い屋根は、一度見たら忘れられないほどの存在感を放っています。すぐ隣に並ぶ現代的な建物の景色とは対照的に、そこだけがぽっかりと、創業当時から変わらない穏やかな空気を纏って佇んでいます。
「席、空いているかな……」 少しの不安と期待を抱きながら、木造の扉を開け入り口をくぐると、幸い一つ席がありました。腰を下ろし、頼んだのは人気メニューの一つとして親しまれている、一皿。数分後、目の前に運ばれてきたのは、食欲をそそる香りをまとった、充足感に満ちた一皿でした。

移ろう街並みの中で、変わらぬ姿を守る場所
この場所が刻んできた時間に目を向けてみます。 この店の始まりは、1978年(昭和53年)。 広島市安佐南区の西原・祇園エリアが、かつての田畑の風景から、大型商業施設やマンションが立ち並ぶ副都心へと姿を変えていく中で、この店は変わらずこの場所にあり続けてきました。
45年を超える歳月、この赤い屋根の下で提供され続けてきた一皿。周辺の景色がどれほど激しく移ろいでも、ここには創業当時から続く老舗の佇まいがそのまま残っています。
重なり合う旨み
スプーンを入れ、まずは一口。
オーダーしたのは「ビーフハヤシオムレツピラフ」。 そこには、単なる盛り合わせではない、緻密に計算された世界がありました。 ソースの中で存在感を放つビーフは、しっかりとした肉々しさを感じさせ、噛むほどに旨味が広がります。長時間かけて磨き上げられた深みのあるハヤシソースのコク。それを受け止めるのは、香ばしく炒められたピラフをふんわりと包み込んだオムレツです。
スプーンで卵を解き、中のピラフとソースを絡めて頬張る。それぞれが主役級の存在感を持ちながら、口の中で出逢った瞬間に、お互いを引き立て合いながら溶け合っていく。一皿でこれほどまでの満足感を与えてくれる料理に出会えたことを、静かに噛みしめる時間となりました
心から安らげる、老舗ならではの空気
店内に漂うのは、使い込まれた調度品が醸し出す温かみ、そして派手さはないけれど、どこか凛とした空気感。一歩足を踏み入れれば、外の喧騒を忘れさせてくれるような、深い安らぎに包まれる感覚があります。
ベースにピラフが選ばれていて、炒めることで生まれた香ばしさがソースと合わさり、最後まで食感の輪郭が保たれています。この一皿に尽くされた細やかな工夫が、落ち着いた空間と相まって、ここの店でしか味わえない、魅力が形として作られていました。
またこの場所を訪ねたくなる、街の宝物
ずっと気になっていた、あの山小屋風の洋館。その先で待っていたのは、運ばれてきたばかりの温かな料理と、穏やかに流れる時間でした。
店の名は「珈琲茶館 庵知来(あんちっく)」
広島の街角に静かに佇むこの場所は、訪れるたびに、積み重ねられてきた確かな手仕事に触れる機会を届けてくれます。店を出て歩き始めても、口の中に残るハヤシソースの余韻が長く続きました。
この心地よい余韻を胸に、次は広島のどんな場所で、どんなグルメに出会えるのか。さらに広く、深く、この街を探索してみたいという思いを抱きながら、また新しい味と物語を求めて歩き進めていこうと思います。
今回ご紹介した店
- 店名: 珈琲茶館 庵知来(あんちっく)
- 創業: 1978年(昭和53年)
- 場所: 広島県広島市安佐南区西原5丁目17-12
- 今回いただいたメニュー: ビーフハヤシオムレツピラフ
- 特徴:存在感を放つビーフ、デミグラスのコクが活きたハヤシソース、オムレツと香ばしいピラフに絡み合い、口の中で至福のハーモニーを奏でる圧倒的な満足感。
- 詳細・地図情報: Google マップで「あんてっく」を確認する


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