【広島の魅力と記述を深堀】「麺工房 東海」の背景にある知られざる物語🍜

グルメ

青々と晴れた、気持ちのいい休日。 午前中にたまっていた洗濯と掃除を片付けると、お部屋も心もすっきりし、午後からは先日SNSで見つけてからずっと気になっていた「ラーメン」を食べに、JR広島駅から出発しました。

可部線に揺られて緑井駅へ。そこから歩いて住宅街を抜け、心地よい風を感じながらのんびり歩くこと20分弱。安佐南区川内にある、お目当ての「麺工房 東海」の看板が見えてきました。


🍜どこか懐かしくて、すっきりと心地いい店内

ガラリと扉を開けると、そこには活気ある空気をそのまま残したような、懐かしく温かい空間が広がっていました。

卓上にはお箸や調味料。壁には手書きの親しみやすい案内ポップやスタンプカードが並び、いかにも「地元の名店」といった佇まいに心が和みます。大勢のお客さんで賑わったという大きな中華料理チェーン店の面影が、この親しみやすい空気の中にそっと息づいているかのようです。

店内は、一人でもふらりと立ち寄りやすいカウンター席と、どこかほっとするテーブル席。コンパクトながらも、お店の方の目配りが届く温かみのある造りになっています。

ふと壁に目をやると、お店を訪れた数多くの著名人たちのサイン色紙が大切に飾られていました。地域で長く愛され確かな歴史が、静かに伝わっていました。

厨房から漂ってくる芳醇な香りに包まれながら、愛され続ける味の背景をじっくりと味わう。そんな落ち着いた時間が、とても心地よく感じられました。


🍜「東海飯店」から「麺工房 東海」へと紡がれる物語

「麺工房 東海」のルーツである「中国料理 東海飯店」の歴史は、戦後間もない昭和23年(1948年)にまで遡ります。先代の王文正氏が、広島市中区新天地の街で産声を上げたのがすべての出発点でした。その後、お店は薬研堀へと拠点を移し、地域の食文化に深く根を下ろしていきます。

昭和40年代を迎えると、お店は大きな黄金期を迎えました。2号店としてオープンした富士見町店を筆頭に、安佐北区口田などへも出店を重ね、広島を代表する一大中華料理チェーンへと成長していきます。この時代、お店の代名詞となったのが、当時としては全国的にも大変珍しかった「中国式手打ち麺」です。職人がダイナミックに麺を伸ばす高い技術と抜群の美味しさは瞬く間に評判を呼び、街中を魅了しました。この富士見町店こそ、広島遠征に訪れた長嶋茂雄氏や王貞治氏、金田正一氏といったプロ野球のV9戦士たちが、こぞって足を運び、深く愛した伝説の舞台です。

その後、平成11年(1999年)には広島駅ビル(アッセ)へも進出するなど、時代を超えて親しまれましたが、やがて大きな転換期が訪れます。平成27年(2015年)6月、大規模な多店舗展開からスタイルをがらりと変革。東海飯店グループが何よりも誇りにしてきた「麺とスープの旨さ」をまっすぐに届けるため、現在の安佐南区川内にラーメン専門店として「麺工房 東海」を誕生させました。

現在はここ川内の小さなお店が、伝統を灯し続けています。一世を風靡した「手打ち」という製法から、現在は店内で丁寧に仕込む「機械打ち」へと形を変え、自家製麺の伝統を今もしっかりと守り続けています。お店の規模や麺の打ち方は変わっても、長年大切に継ぎ足されてきた伝統の醤油ダレや、かつてレジェンドたちを唸らせたあの「牛テールスープ」の味わいは、何一つ変わることはありません。「麺工房」という屋号には、形を変えてもなお「最高の自家製麺を打ち、お届けする」という先代から続く強い誇りと温かい味のDNAが、今も脈々と受け継がれています。


🍜「麺工房 東海」の牛テールスープラーメンを味わう

テーブルに器が運ばれた瞬間、立ち上る湯気とともに、上品でどこか優しい香りがふわっと鼻をくすぐります。器をそっと覗き込んでみると、透き通っていながらも、牛の旨味がじんわりと溶け込んでいるのが一目でわかる、綺麗な黄金色のスープがキラキラと輝いていました。その上に美しく並んだレモンのスライスと、たっぷりの青ネギが目を引きます。器の底には、ほろほろになるまで煮込まれた牛テールのお肉が贅沢に沈んでいました。

レンゲですくい、まずはスープを一口。 一晩じっくりと時間をかけて煮込まれたスープは、口に含んだ瞬間にどっしりとした肉の旨味とコクが広がります。それなのに、不思議なほど脂っこさはなくて、後味は驚くほどすっきり。丁寧にとられたお出汁のような繊細さと、ラーメンスープとしての力強さが優しく調和して、五臓六腑にじんわりと染み渡っていきます。さらに、スープに馴染んだレモンの爽やかな酸味がほんのりと加わることで、牛テールの深みがよりいっそう洗練された味わいへと引き立てられました。

このスープに合わせるのは、店内の製麺機で打たれた自家製の極細ストレート麺です。すうっとすするとスープをしっかりと纏(まと)って持ち上がり、噛むほどに小麦の優しい香りと、自家製ならではの心地よいコシが広がります。パツッとした小気味よい歯切れの良さが本当にたまりません。麺の旨さを何よりも大切にする職人の矜持(きょうじ)が、現在のスープと自家製麺の完璧なバランスの中にしっかりと息づいているのを感じます。スープを吸ったお肉を麺と一緒に絡めてすするたび、お肉の旨味がじゅわっと口いっぱいにあふれました。

後半、別皿で添えられたキムチを少しずつスープに溶かしていくと、それまでの上品な黄金色のスープが一気に表情を変えます。濃厚なコクとレモンの爽やかさに、キムチのピリッとした辛みと酸味がきれいに加わり、美味しさがさらに加速。最後の一滴までスープを飲み干したくなる、そんな店主さんの細やかな計算が尽くされた構成です。


🍜一杯の器に刻まれた、記憶を胸に

お腹も心もぽかぽかと満たされながら、壁に並ぶ著名人たちのサインを見上げます。 この一杯は、決して気取った高級料理ではありません。この店を訪れ、日々を駆け抜ける多くの人々や、かつて高い緊張感のなかで戦っていたレジェンドたちの心と身体を優しく包み込み、明日への活力を与えていた、かけがえのない味そのものでした。

大きなチェーン店の時代を経て、現在はここ川内の地で、その伝統を静かに、力強く守られています。それは単にお腹を満たすだけでなく、広島の温かい人情や職人のプライドが一杯の器からじんわりと伝ってくるような、そんな気がするのです。

静かでアットホームな空間の中に、言葉だけでは語り尽くせない、深い魅力が優しく息づく街。これからも大好きな広島の街を探索していきたいです。

店舗情報・アクセス麺工房 東海(食べログ)


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