休日の柔らかな日差しに誘われて、JR古市橋駅からのんびりと歩き出しました。
川のせせらぎを横目に松原橋を渡り、中筋の方へ。住宅街を進むと、視線の先には目線の上を貫くアストラムラインの高架が、空を切り取るように伸びています。地上を走るJRののどかな風景から、空を渡るような近代的な景色へ。その移り変わりにワクワクしながら歩いていると、ふと足が止まる場所がありました。

賑わいのなかに息づく、赤茶色の「静寂」
中筋駅のバスターミナルが見えてくる少し手前。周囲の新しいマンション群のなかで、ひときわ落ち着いた風格を漂わせる建物が姿を現します。
開館から35年もの間、「広島市安佐南区民文化センター」の名前で親しまれてきたこの場所は、2020年の春から「マエダハウジング安佐南区民文化センター」という愛称で呼ばれるようになりました。条例上の正式な名称は今も変わりませんが、新しい呼び名とともに、いっそう街の日常に溶け込んでいるように感じられます。
その日はちょうど催しの最中だったのでしょうか。入り口付近は楽しそうな人たちの活気に溢れていて、建物全体がみずみずしい熱気に包まれていました。新しく塗り替えられていく街並みのなかで、そこだけが変わらぬ構えでみんなを見守っている。その佇まいを見上げているうちに、「ここはいつからあるんだろう?」と、この場所が重ねてきた時間を知りたくなりました。
かつての街道沿いに建つ、街の文化拠点
調べてみると、このセンターが生まれたのは1985年のことでした。広島市がそれぞれの区に文化の拠点を作ろうとしていた頃、当時の大きな期待を背負って、安佐南区にこの立派な建物が誕生したのです。
実はこの場所、ずっと昔には「古代山陽道」という古い道が通っていた、歴史ある土地でもあります。近くにある神社やお寺と同じように、大昔から人々が行き交い、集まってきた場所なんですね。かつての街道沿いで賑わったであった土地に、今またこうして新しい世代の集いの場が深く根を下ろしていることに、脈々と続く土地の力のようなものを感じました。
今の建築にはない、どこかゆとりを感じさせる造りや、雨風を優しく受け止めてきた赤茶色のタイルの壁。そこには、街の文化をずっと守り続けてきた、この場所ならではの誇りが静かに宿っているようでした。
催事案内に並ぶ「街の楽しみ」扉の向こうの呼吸を感じて
入り口の横にある掲示板に目を向けると、ロビーコンサートや地域の作品展、さまざまな講座のお知らせなど、地域に根ざした「催事案内」が仲良く並んでいました。
安佐南区は「神楽」などの伝統芸能がとても盛んな地域でもあります。開館した頃から、ここはそんな伝統を守り、また「安佐南区民まつり」のような賑わいを生み出す地域の拠点として、街の心臓のような役割を担ってきました。
2025年の春からは運営の仕組みが新しく引き継がれ、建物はそのままに、その中で生まれる活動にまた新しい物語が加わっていくようです。掲示された案内の一枚一枚を眺めていると、重厚な扉の向こう側で、今まさに誰かが音を奏で、誰かの笑顔がこぼれている。その温かな気配を感じるだけで、お散歩中の私の心はふんわりと満たされていくようでした。
今日はあえて扉は開けず、この外側の賑やかな空気を味わうことにしました。中から漏れ聞こえてくる活気があまりに心地よくて、「次はどの催しを目当てに来ようかな」と、ゆっくり計画を立てる時間を楽しみたくなったからです。
弾むような余韻を、お散歩の続きに
建物を彩る赤茶色のタイルは、夕暮れ時のような安心感を散歩者の心に手渡してくれます。
「次はあの掲示板で見つけた音色を、直接聴きに来るのもいいかも」そんな軽やかな想いを胸に、私は再びバスターミナルの方へ、ゆっくりと歩き出しました。
施設紹介
マエダハウジング安佐南区民文化センター: 1985年(安佐南区民文化センター)の開館以来、地域に愛され続けている文化の拠点です。本格的なホールのほか、展示ギャラリー、図書室、会議室などを備え、神楽の上演や各種コンサート、作品展など、安佐南区の豊かな文化活動を支えています。
【公式サイト】 広島市マエダハウジング安佐南区民文化センター


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