鉄板の上で広がる香ばしさ🍽️広島お好み焼ソースの歴史と受け継がれるこだわり

グルメ

休日の昼下がり、テレビで見かけた地元のお店が気になり、足を運んでみました。店内は満席…諦めようか迷ったその時、運良く席が空き、滑り込むように着席することができました。

目に飛び込んできたのは、鉄板の上で鮮やかに踊る「赤い麺」。迷わずそれが入っているメニューを麺ダブルで注文しました。運ばれてきたのは、少しふんわりと丸めのフォルムが愛らしい一枚。一口食べて驚いたのは、そのキャベツの甘みです。火の通し方に徹底してこだわり、甘さを最大限に引き出した、まさに「キャベツが主役」のお好み焼きでした。

そこへ、唐辛子を練り込んだピリ辛麺とキムチのピリッとした刺激、さらにラー油マヨと卵のマイルドさがプラスされ、口の中はまさに「旨辛」の幸せでいっぱいに。あまりの美味しさに夢中で食べ進めるうちに、ふと疑問が湧きました。

「この味をまとめ上げている濃厚なお好み焼ソースは、一体いつから、どのようにして広島に根付いたのだろう?」と、その奥深い世界を辿ってみたくなりました。


「おやつ」から「食事」へ🍽️場所と共に変わったお好み焼の役割

広島お好み焼の原点は、戦前の駄菓子屋などで親しまれた、水で溶いた小麦粉を薄く焼きネギなどを乗せたシンプルな軽食にあります。当時は、鉄板で焼く音から「じゅうじゅう焼き」などとも呼ばれ、子供たちが小銭を握りしめて買いに来る、今で言う「お好み焼きの原型(おやつ)」のような存在でした。

それが戦後の焼け野原、復興期になると、新天地広場などに多くの「屋台」が集まるようになります。空腹を満たすためにキャベツや麺が加わり、ボリュームが増していく中で、これらの屋台群が後の「お好み村」の原型となっていきました。

🍽️サラサラから濃厚へ🍽️専用ソースがたどった開発のドラマ

お好み焼のボリュームが増すにつれ、味の決め手であるソースも劇的な進化を遂げました。

初期の屋台で使われていたのは、サラサラとした「ウスターソース」でした。しかし、キャベツや麺などの具材が爆発的に増えると、ウスターソースでは具材の隙間を通り抜けて鉄板の上で蒸発してしまい、肝心の具材に味がなじまないという課題に直面します。さらに、大量のキャベツから出る水分でソースが薄まり、水っぽくなってしまうという悩みもありました。

そこで、屋台の店主たちは地元のソースメーカーに「もっと具材にしっかり絡み、野菜の水分に負けない、とろみとコクのあるソースを作ってくれ」と直談判します。その熱意に応え、1952年(昭和27年)に日本初とされる「お好み焼専用ソース」がついに誕生しました。この粘り気こそが、バラバラだった具材を一枚の料理として一体化させたのです。


🍽️どれにする?お店ごとに選ばれるこだわりのソースたち

現在、広島で愛されている主な銘柄には、それぞれ長い醸造の歴史と独自の個性があります。

カープソース(1869年創業): 明治初期から続く毛利醸造。酒造業からスタートした老舗が戦後に開発したソースは、プロの職人に愛される「辛口でキレのある味」を今も追求し続けています。

ミツワソース(1916年創業): 食酢の製造販売から始まったサンフーズ。広島の聖地「お好み村」全店舗で採用されている公式ソースであり、素材を活かすスッキリとした味わいが魅力です。

オタフクソース(1922年創業): 酒・醤油の卸売業「佐々木商店」がルーツ。1952年にお好み焼店からの要望で専用ソースを発売しました。今や代名詞となった「デーツ(なつめやし)」によるコクのある深い甘みは、1975年から続く伝統の味です。

テングソース(1931年創業): 三原市の中間醸造。戦前から続く技術を活かし、備後地方で圧倒的な支持を得ています。他社に比べてスパイスの風味が非常に強く、一度食べると癖になるパンチの効いた味わいです。


🍽️素材と技の掛け合わせで無限に広がる「広島の味」

今回の体験で改めて感じたのは、広島お好み焼の味は、ソース単体ではなく「麺の種類」や「焼き方」との相性で決まるということです。

広島は「混ぜる」のではなく「重ねる」文化。生麺、蒸し麺、袋麺、そして「いこの麺」のような専用麺まで、麺の選択肢は多岐にわたります。それをパリッと香ばしく焼き上げるのか、ソフトに仕上げるのかという職人の焼き方次第で、ソースの乗り方は劇的に変わります。

そして、忘れてはならないのがキャベツが生み出す「甘さ」です。山盛りに盛られたキャベツをじっくり蒸らし、その甘みを最大限に引き出す。この工程があるからこそ、濃厚なソースやスパイシーな麺とも絶妙に調和するのです。

鉄板、生地、麺、具材、そしてソース。これらが一枚の鉄板の上で絶妙に組み合わさり、一体となって焼き上がるお好み焼きは、店ごとに味が違い、それぞれのこだわりが詰まっています。

駄菓子屋の店先から屋台、現代の店舗へと形を変えながらも、その中心には常に店主と老舗メーカーが二人三脚で進化させてきたソースの探究心がありました。自分好みの一枚を探す旅は、広島の街の歴史と人々の想いを知る、最高の入り口なのかもしれません。まだ知らないお好み焼きの味を求めて、これからも広島の街を探索していきたいです。

今回紹介したお店

今回、キャベツ本来の甘みと、素材を引き立てる多彩な組み合わせを楽しませてくれたのは、広島市安佐南区にあるこちらのお店です。

お好み焼 Q(キュー) お好み焼 Q(Instagram)


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