【広島の魅力を深掘り】白い外壁に隠された秘密とは?そごう広島店の歴史と進化する空間をめぐる旅

建造物

広島の街の中心、紙屋町交差点。そこに立つと、誰もが目にする大きな白い建物があります。

壁一面を覆う格子状のデザインが印象的な「そごう広島店」。1974年の開業から半世紀以上もの間、この街の移り変わりをずっと見守り続けてきたランドマークです。毎日たくさんの人が行き交うこの場所には、実は街の歩みと重なる、興味深い物語が隠されています。

普段、何気なく通り過ぎてしまうその場所に隠された、歴史と空間の魅力を一歩深く、紐解いてみましょう。


440年の歩み、海からの誕生から未来へ

今でこそ「3階にバスセンターがある百貨店」として当たり前の風景ですが、この土地の歴史を遡ると、実に約440年もの壮大なドラマが眠っています。

すべての始まりは戦国時代末期の1589年。毛利輝元が広島城を築城する際、それまで海や干潟だったこの場所を埋め立てて人工の陸地を作ったのが始まりでした。山から下りてきた武士や全国から集まった商人たちが住み始め、ここが最初の街となります。江戸時代に入ると、広島藩を動かすエリート武士たちの広大な武家屋敷街へと姿を変え、近くに伊予の紙商人が集まったことから「紙屋町」という地名が定着していきました。

明治から昭和初期にかけては一転して、一般人立ち入り禁止の軍事基地としての歩みを刻みます。武家屋敷の跡地には陸軍の兵舎や広大な練兵場が置かれ、日清戦争時には広島城内に大本営が移るなど、この紙屋町周辺の一帯が戦時中の臨時首都として、日本の軍事と政治の重要な中枢となりました。

しかし、1945年の原爆投下によって軍施設は壊滅します。そこからの歩みこそが、現在の景色へと繋がる大きな転換点でした。戦後、この場所は市民のための場所に生まれ変わり、大きな一歩を踏み出します。当時、広島市内にバラバラに散らばっていたバス停を1つにまとめるため、1957年7月、複数の事業者が共同で乗り入れる本格的な一般バスターミナルとして日本初の「広島バスセンター」がこの地に開業したのです。当時は2階建ての独立した建物で、一気に広島の交通の要所となりました。

昭和後期に入り、バスセンターの利用者が急増すると、敷地をさらに有効活用しようと画期的な一体型ビルの建設が計画されます。そうして1974年10月、1・2階と4階以上を「そごう広島店」、3階を丸ごと「広島バスセンター」の乗り場とする、当時としては全国的にも珍しい「百貨店直結型ターミナル」が完成したのです。

平成から令和へと時代が進むなかで、1994年に開業した新館が2023年に閉館するという大きな変化もありました。現在はバスセンターのある「本館」の1館体制へと集約。2023年から始まった段階的な大規模リニューアルを経て現在も進化を続けており、新しく生まれ変わったあとも、さらなる未来に向けて各フロアの刷新を続けています。ターミナル直結の利便性を活かしながら、この場所は今も未来へ向けて歩みを進めています。


外壁に隠された「石垣」と「鯉」の秘密

そごう広島店といえば、丸みを帯びた白いパネルが綺麗に並ぶ、あの独特な外観を思い浮かべる方も多いはず。実はこの白い外装、1974年の開業当時からあったものではありません。

開業当初の本館はシックなレンガ調のデザインでしたが、1994年の大規模外装改修にともない、現在の白い姿へとダイナミックに刷新されました。この現在の外観設計を手掛けたのが、石本建築事務所です。

このリニューアルの際、正式なデザインモチーフとして意図されたのが、広島城の別名「鯉城(りじょう)」にちなんだ「鯉(コイ)のうろこ」でした。地元の誰もが愛するプロ野球球団「広島東洋カープ」のチーム名がこの鯉城に由来しているように、新しく生まれ変わるそごうの外観にも、広島の象徴である「鯉」のモチーフが美しく落とし込まれたのです。

白いアルキャスト(アルミ鋳物)の格子が描く上品な陰影は、まさに伝統ある街の記憶をモダンに表現したデザイン。歴史と地域への想いがしっかりと込められた外壁だと思うと、いつもの建物がより一層魅力的に見えてきます。


リニューアルで進化した空間

昭和の開業以来、街のシンボルとして親しまれてきた重厚な外観。その扉を一枚くぐると、今度は時代を先取る洗練された空間が広がります。

そごう広島店は近年のリニューアルにより、本館の各フロアが大きく生まれ変わりました。新しくなったビューティーゾーンや、洗練されたライフスタイルのフロアは、歩くだけで楽しくなるような、明るく開放的なデザインへと大きな進化を遂げています。さらに、3階で直結する広島バスセンターの「バスマチフードホール」なども加わり、お買い物の合間に心地よく過ごせる空間が充実しました。

時代に合わせた快適さや新鮮さを取り入れながらも、地下の活気ある食品フロアなど、どこかホッとする昔ながらの温かみが随所に残っている。それこそが、半世紀にわたり市民の暮らしに寄り添い、愛されてきた百貨店だからこそ提供できる安心感なのです。


歴史を知ると街歩きが楽しくなる

そごう広島店は、単にショッピングを楽しむだけの場所ではありません。広島の復興と交通の歴史を支え、城下町の記憶をモダンに今に伝える、この街の歩みそのものを美しく記述した場所です。

今度、お店の前をふと通りかかったとき。あるいは、新しくなったフロアでお買い物を楽しむとき。ぜひ、あの白い外壁や、心地よい空間に目を向けてみてください。きっと、いつもの見慣れた景色が、少しだけ愛おしく、特別なものに映るはずです。


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